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Mazda Gベクタリングコントロールに思う事

常吉

マイナーチェンジを受けたMazda CX-3 (2wd 1.8L Diesel)の評判が非常にいいので試乗してきました。興味の焦点はMazdaの独自技術の一つであるGベクタリングコントロールと1.8Lに排気量アップされたディーゼルエンジンです。

Gベクタリングコントロールというのはコーナー進入時に僅かにエンジンブレーキを掛け、(極端に言えば)車を前のめりにすることによって、フロントタイヤの接地荷重を増加してコーナリングフォースを高めることを狙った技術です。
(単純化していえばF=μMg:Fは駆動力とコーナリングフォースの合力、Mgは接地荷重 従ってMgが増せばFが高くなる。)

(アニメでは左右のタイヤ荷重も変化していますが、これは遠心力を受けているだけの話で、どんな車にも起きている万物共通の物理現象です。Gベクタリングはあくまで前後荷重バランス制御です。)
なんだか新理論のように聞こえますが実はスポーツ走行ではドライバーが普通にやっている技術で、基本的にはアンダーステアを軽減して車の限界コーナリング速度を上げる技術だと私は理解しています。ってことはつまりアンダーステアなど無縁の街乗りなんかでこれの効果が出るんかい?と疑問に思い今回の試乗に至ったわけです。

しかし、私が信頼している自動車評論家の清水和夫さんもこんな事を仰っているんですねぇ。


一般ユーザーの評判はほぼ2分されているようです。
一つは「体感できない」
もう一つは「低速でも体感できる」
中には「この技術のお蔭で直進安定性まで良い」なんて言う訳の分からん解説しているディーラーまで。

ここからが私が言いたいことです。
仮にこの技術を搭載した車のコーナリング特性が優秀だったとします。しかし果たしてそれがGベクタリングコントロールのお蔭なんでしょうか? コーナリング特性というのは車の重量配分、駆動方式(FF,FR,RR,4WD)、タイヤ、サスペンション系、車体剛性など非常に多くの因子に大きく左右されるようです。(残念ながら私は定量データや理論式を今持っていないのでここではそう表現します。)ですから例えこの技術を搭載したCX-3のコーナリング性能が非常に高かったとしても、それがGベクタリングコントロールのお蔭であると断言されることには非常に大きな違和感を覚えます。

しかし、車が趣味の方はMAZDA公式サイトのこの映像を持ち出して反論されるかもしれませんね。ほら、あるかないかでこんなに安定性が違うじゃないかってドヤ顔で。


でもね、甘い!
現代の車のコーナリング特性は先に挙げたハードウェアだけでなく、ESC(横滑り防止装置)、ABS、TRC(トラクションコントロール)、車速感応式電動パワステなど様々な電子制御を統合的に駆使して車種ごとにスムーズなコーナリング特性を作り上げています(正確に言えば、各カーメーカーがそう主張しています)。もしもこれらの制御にGベクタリングコントロールをただ上乗せすればそれ以外の制御が最適解から外れるのは当然の事なので、Gベクタリング制御搭載車のこれら制御は非搭載車とは異なる専用のチューニングが施されるはずです。つまりESC,ABS,TRC,EPSにGベクタリングコントロールを加えた統合制御です。せっかくそうして作り上げた制御からGベクタリングコントロールだけ外せばコーナリング特性はどうなるのか…?そう思いません?

もしもGベクタリング制御の効果を真面目に調べるならば、Gベクタリングコントロールなしで最適化した同じ車種の車と比較しなければお話にならないと思います。さらに言えばもしもGベクタリングコントロールの効果が絶大であるならば制御だけでなく、サスペンションセッティングなどハードウェアも最適化しなおしておく必要性も出てくる場合さえあるのではないでしょうか。どちらも車を1台開発することになるので比較のためだけならば現実的には実行不可能です。なので上のビデオでは単にGベクタリングコントロールをON/OFFしているだけの比較にならない比較だと思っています。

公式HPにはこんなグラフが出ていますが、なにこれ?
MZDG1.jpg

MZDG2.jpg

一般用語でない縦軸の定義が書かれていないことには目をつぶりましょう。しかし、縦軸にも横軸にも絶対値どころか、相対値すら書かれていないじゃないですか。原点がゼロであるかどうかも不明。これじゃGべクタリングによる改善代が10%なのか一億分の一なのか分かりません。(効果があるのかないのか分からないということです。)この意味のないグラフを発表会で見せられたジャーナリストの方々はどう反応したんでしょうか?馬鹿にされた気分にならなかったのでしょうか。
それとMazdaにはGベクタリングの有無による前輪接地荷重の変化量をちゃんと開示してほしかったですね。それがこの技術の大もとなんですから。

そんなことを考えながら試乗に行ってきました。
結果ですが、市街地での15分ほどの試乗に於いてCX-3のハンドリング特性にはなんの感銘も受けませんでした。
我が家の基本設計の古~いX1(e84 FRベースの4wd)の方が明らかに感動的です。
そしてちょっと調べてみたのですが、マイナーチェンジ前の1.5Lディーゼル搭載車でも前後重量配分は驚愕の63:37。
今回は1.8L化によって更にフロントヘビー…、ですよね。FFの重量配分は60:40くらいがベストであるとかネットには書かれていますが、それはあくまで0-100km/h加速とかでフロントが浮いてしまうときのことを考えたベストでしょう。FF車としてはそうせざるを得ないのは分かるのですが、コーナリング時にはフロントに加わる遠心力(Ff=mrω*ω, Ffはフロントが受ける遠心力、mはフロント重量、rはコーナー半径、ωは角加速度)が過大となってアンダーが出ることは明白です。
Gベクタリング制御まで手を出したくなる気持ちはここでようやく納得できました。(気持ちですよ、実際の効果別問題。)

エンジンについて。
義のないディーゼルのダウンサイジング化には25年前から反対してきた私としては今回の排気量アップの英断には心から拍手を送っていたのですが、先日5日間試乗させてもらったBMW 118d(2Lディーゼル)とは排気量差を考えても全く非力。短い試乗時間だったのでエンジンのせいかトランスミッションのせいか分かりませんでしたが、アクセルペダルレスポンスにも欠けて駆け抜ける歓びには程遠い気がしました。
ただし、静粛性や車内振動は文句なし、アイドルストップからの復帰も気になりませんでした。
インテリアデザインも非常に洗練されていて、試乗を終えて自分のX1のドアを開けた時はがっかりでした。

エクステリアは文句なしにカッコいいですね。ただ、大きな車に全く興味がない私は気になりませんが、Bカテゆえに狭い車内やラゲッジスペースを気にされる方は多いのではないかと思いました。販売面では苦しいことが見えているのにこういう車を作ってくれるMazdaさんは貴重なカーメーカーですね。



面倒くさいので定量データや理論のない思い込みだけの異論反論はお控えください。





7月1日追記)
今日アップされたclicccar8thの新型CX-3試乗記には私と同じような感想が書かれています。
「乗り心地と静粛性は大幅に向上したけれど…」
えぇ~って思えるCX-3試乗記が多い中、共感しました。
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Posted by常吉

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