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ミラーサイクルエンジンの二つの本質について

常吉

ダウンサイジング過給ガソリンエンジンやハイブリッド用NAエンジンに組み合わせることが大流行のミラーサイクル、一見どちらも同じミラーサイクルのように思われがちですが、実はその効果が出るメカニズムはサイクル論的には全くの別物なのです。今回はそんなミラーサイクルについて考えてみたいと思います。

ミラーサイクルエンジンとは膨張比>圧縮比のエンジンを言います。エンジンの熱効率は熱力学的に見て膨張比に大きく依存しています。膨張比が大きければ大きいほど熱効率は高くなるのですが、昔からのコンベンショナルなエンジンでは膨張比=圧縮比だったので「圧縮比が高い方が熱効率が高い」というような表現がされてきましたが正しくは「膨張比が高い方が熱効率が高い」のです。

膨張比を大きくするにはエンジンの図面をそのように引くだけでよいのですが、それにつれて圧縮比も高くなってしまいます。そうすると圧縮行程でシリンダー内の混合気が過剰に高温高圧となり、その結果膨張行程でノッキングを起こしてしまいます。これを防ぐためには点火時期をベストなタイミングよりも遅らせればいいのですが、そうすると熱効率が落ちてしまったり排気温度が上がって触媒やターボチャージャーに悪影響を与えたり、とろくなことはありません。

そこで考案されたのが膨張比>圧縮比のミラーサイクルです。Hondaのナマさんが考え出して現在も発電機用エンジンとして量産されているExLinkのように賢いリンク機構を使って膨張比>圧縮比を実現したエンジンもありますが、ここでは一般的な吸気閉弁時期調整によるミラーサイクルを説明します。

例によってエンジン開発に携わったことのない一般ユーザーの方が理解しやすいように原理的な表現をしますので、同業の方による細かい突込みはご勘弁ください。分かって書いていますので。

コンベンショナルなエンジンでは吸気行程でピストンが一番下に下がった時に吸気弁が閉じられ、圧縮が始まります。(ほらほら、突っ込むなって言ったばかりじゃん。教科書のPV線図だって簡易的にそうしてるだろ。)
ミラーサイクルエンジンではこの時点ではまだ吸気弁が開いていて、ピストンの上昇と共にせっかく吸入した空気を吐き出してしまいます。←ここ大事。
ある程度ピストンが上昇した時点で吸気弁を閉じると、ここからようやく圧縮が始まります。つまり通常のバルブタイミングであれば13であった圧縮比の実効値を10とか8とかにすることができるわけです。(実行圧縮比12にするか10にするかはたまた9にするかは設計者の考え次第です。)そして膨張行程では排気弁はピストンが下がり切るまで開かないので膨張比は14です。めでたし、めでたし、低圧縮比・高膨張比エンジンの出来上がりです。

これによってコンベンショナルなエンジンでは不可能だった高膨張比が実現し熱効率が高くなるわけです。
とまぁ、これがプロアマ問わず世間一般の評論家諸氏の理解です。

実はミラーサイクルにはもう一つ忘れてはならない燃費低減要素があります。
何かと言うと、それはミラー化によって実質の排気量が下がる(=スロットルが開くのでポンピングロスが減る)点です。上で「←ここが大事。」と書いた部分がありますが、圧縮行程初期にシリンダー内の空気を吐き出してしまうので実質のダウンサイジングエンジンになってしまうわけです。前回述べたように、違うエンジンを積んだ2台の同じ車を同じ状態で運転するために必要な馬力は同じです。つまり必要な空気量は同じです。なのにせっかく吸った空気を吐き出してしまうミラーサイクルエンジンにおいてはそれを補うためにスロットルを余分に開かなければなりません。

もうお分かりですね。
ミラーサイクルエンジンのポンピングロスはコンベのそれに比べて少ないのです。

1. ノッキングを起こすことなく高膨張比にできる。
2. 吸気弁遅閉じによりポンピングロスが減る。


これがミラーサイクルの燃費低減要因です。


と言いたいのですが、実はこれは自然吸気ガソリンエンジンだけに言えることなのです。もはや一大潮流となった過給ダウンサイジングガソリンエンジンにおけるミラーサイクルの燃費低減メカニズムは今まで述べてきたメカニズムとはサイクル論的にもポンピングロスについても全くと言っていいほど異なっているのです。

これについてはまた次回のおたのしみに。


   
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Posted by常吉

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