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ロングストロークエンジンの低速トルクが大きい理由(2)

常吉

ずいぶん長い時間が空いてしまいました。
この間主だった国内カーメーカーのエンジン屋さんとの打ち合わせのためにホテル住まいで全国行脚、疲れ切った週末はストレス解消のために無理やり山スキーという生活が続き、体調も崩してしまいました。


                昼は講演、夜は宴会の日々 とても疲れます。
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そして週末は山スキー Skier Sayoko Y.
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さて、前回の続きですが、エンジンに多少なりとも興味がある方なら当然の内容を書き連ねることをご容赦ください。

何故ロングストロークエンジンの低速トルクがショートストロークのそれに比べて大きいのかという命題ですが、その前にエンジンの馬力(仕事率:kW[kgf・m/s])あるいはトルク(仕事:Nm[kgf・m])は何に支配されるのかという事をガソリンエンジンを例にとってお話ししたいと思います。

内燃機関は燃焼室内で混合気(燃料+空気)を燃焼させ、その燃焼によって高温になった混合気が膨張する圧力でピストンを押し下げて機械的な力に変換し、それが最終的にタイヤを駆動しています。その圧力が高ければエンジンの出力あるいはトルクは高くなります。

ではどうしたらその燃焼圧力が高くなるか。

燃料をたくさん噴けば燃焼圧力が高くなるかと言えば残念ながらそんなことはありません。燃焼のためには酸素が必要です。ガソリンエンジンでは燃料の量と空気の重量の比率(空燃比:A/F)が1:14.7(理論空燃比:通称ストイキ)の場合燃料は完全燃焼し、それ以上の燃料を与えてもそれは燃え残ってしまいます。(またCO、NOx、HCなどの有害排気ガスを浄化してくれる三元触媒は理論混合気でないと浄化作用がないので現代のガソリンエンジンは最高出力付近を除いて(*1)理論空燃比で運転されています。)

したがって燃料を増量するためにはエンジンが吸入する空気を燃料に見合った分だけ増やさなければなりません。燃料の増量はインジェクターへの指示値を高くすればそれで終わりですが、吸入空気量を増やすにはエンジン側の工夫が必要になります。

つまり燃焼圧力を高めるためにはエンジンが吸入する空気量を増やすことが必要になります。(端的に言ってしまえば過給がその最たる手段です。)ロングストロークエンジンは吸入空気量がショートストロークに比べて低速側で多くなる特質を持っているのです。これがロングストロークエンジンの低速トルクがショートストロークエンジンのそれに比べて高くなる本質的な理由です。
熱損失や時間損失による熱効率の差やノッキングの起こりにくさなどという小難しい話ではありません。
単に吸入空気量が増えるのでその分投入できる燃料の量が増えるのです。

ではなぜロングストロークエンジンは低速側の吸入空気量がショートストロークエンジンに比べて多くなるのか?
それは次回にお話ししたいと思います。


(*1)
現在のほとんどのガソリンエンジンは最高出力付近で1:12~1:13付近(過濃混合気:通称リッチ)で運転されていますが、それは燃え残ったガソリンでピストンや触媒を含む排気系を冷却するためだったり、熱乖離と言って高熱によって燃料が熱分解してしまう分を補うためのものであり、ざっくり言ってしまえば余分に与えられた燃料が燃えて力になるわけではありません。そしてその燃え残った燃料は使う酸素がないために触媒で浄化されることなくエンジンから排出されて大気を汚染していました。つい最近導入されたRDE規制はこれを許さないため今後のガソリンエンジンは全域ストイキ運転になっていきます。


   
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Posted by常吉

Comments 2

There are no comments yet.
しうきち  

早く(2)が読みたくてウズウズしていました!
ホンモノの技術者にしか語れない話が非常に面白いのです。

・・・と、思ったら(3)に続くんですね。
期待しています!

2019/03/02 (Sat) 21:11 | EDIT | REPLY |   
つねきち  

しうきちさん、

コメントありがとうございます。
楽しみにしてくださっているとのこと、大変励みになります。
その(3)をアップしましたのでご覧いただければ幸いです。
まだまだネタはあるんですがねぇ…

2019/03/02 (Sat) 22:52 | EDIT | REPLY |   

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